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第1章 1.1 粉砕

1.1.1 目的

粉砕の定義は、固体原料に外力を加えて破壊することで細かくし、粒径の減少と表面積の増大をはかる機械的な操作である。

その定義を目的と考えると下記の物が挙げられる。
(a)粒径の減少
 ・流動性の向上
 ・均一混合性の向上
 ・充填性、計量性の向上

(b)表面積の増大
 ・溶解性、溶出速度の向上
 ・有効成分の抽出性の向上

1.1.2 原理

粉砕に使われる物理的な外力には下記の物が挙げられる。

上記の力が、単独もしくは複合的に作用して固体原料が粉砕され、変形、破壊されることで粉砕物の機能が向上する。
粉砕のメカニズムは、下記のように行われる。
 (1)体積粉砕
  ・固体原料が全体的(体積的)に粉砕作用を受け、体積的に破壊されること。

 (2)表面粉砕
  ・固体原料の表面が削られながら粉砕作用を受ける

 粉砕によって微粉になるほど、表面積が増大することで、表面活性が向上し、粉塵爆発の危険性も増すため、不活性ガス雰囲気下で粉砕する場合もある。
 また、微粉になるほど、凝集力や付着力、静電気力が増し、ハンドリングが困難になる場合が多くなる。さらに、微粉は舞いやすいため、集塵設備の完備も必要となる。

1.1.3 装置の分類

(a)乾式粉砕機
 乾式粉砕機の分類は粉砕サイズによって、粗砕機、中砕機(粉砕機)、微粉砕機に分けられる。

 (1)粗砕機:数十cmの個体原料を数mmのサイズに粉砕する装置
      一般的に大きなサイズの固体原料を粉砕するときの前処理としての意味を持つ。

 (2)中砕機:数mmの個体原料を数百μmのサイズに粉砕する装置
      この領域を粉砕機と称することもあるため、そのサイズ範囲は明確ではない。

 (3)微粉砕機:数百μmの個体原料を数μmのサイズに粉砕する装置
       一般的に100mesh以下の領域を言う。

 (4)超微粉砕機:数μmサイズ以下の数nmに粉砕する装置


なお、上記分類は明確なサイズ分類はなく、諸説存在する。

(b)その他の粉砕機
 湿式粉砕機の代表機種としてボールミルが挙げられる。液中に固体原料を分散した状態で、粉砕媒体からのエネルギーを固体原料に衝撃力や剪断力を与えることが出来るため、乾式粉砕の到達粒径よりもより細かな領域まで粉砕が可能となっている。
 使う媒体を小径化するタイプや撹拌翼で媒体を撹拌させるタイプもあり、目標とする粒径に合った運転方法を選択する必要がある。
 また、粉砕される個体粒子を液体窒素などで冷やすと、硬くて脆い状態になる。これを低温脆性と言い、この低温脆性を利用した粉砕方法が低温粉砕である。
 低温状態で粉砕するため、低融点物質やゴム、プラスチックの粉砕が可能で、食品の場合は、熱による変質や風味、香りが損なわれずに粉砕が可能である。

1.1.4 運転パラメータ

粉砕操作における運転パラメータを、機械的条件と運転条件で分類した。
それぞれの装置の特徴と固体原料の物性及び目標粒径に合わせて装置を選定する必要がある。


機械的条件:粉砕機構、ローター形状、スクリーン径、ステーター形状、ハンマー形状
      粉砕部材質、ビーズ材質、ガス供給ノズル形状、等


運転条件:回転速度、衝撃回数、スクリーン径、ギャップ間隔、ビーズ径、処理能力
     処理風量、個体粒子温度、ガス供給圧力、等

〔株式会社奈良機械製作所 岡本 真二〕

更新日:2020年10月16日