包装の目的としては、第一に「内容物の保護」があげられる。内容物は、衝撃、水分、酸素、光など、それを劣化させるさまざまな要因から保護されなければならない。あわせて「情報提供」や「取り扱いの利便性」も重要な項目となる。包装を見ただけで内容物に関する適正な情報が得られることは、特に医薬品においては取り違え防止に大きく役立つこととなる。そのほか、「経済性」「販促性」「環境性」「作業性」「衛生性」などの機能もあわせ、包装は「安全」と「安心」に直接結びつく重要な機能である。
包装機械には、これらの重要な目的を満たすため、各種包装材料に対応できるフレキシビリティが求められる。インプットとなる包装材料、内容物、デザインに対し、要求品質を満足する包装品をアウトプットしなければならない。特に、包装材料は、防湿性などの機能に加え環境側面での改善も進んでおり、対応する包装機械には日々適応能力を進化させる事が求められる。新規包装材料の機械適性を事前に確認し、場合によっては付加機能を設けて適応能力を高める必要がある。また、内容物に求められる条件によっては、機械単体での適応能力に限らず、機械の設置環境までトータルで考える必要もある。
最近では、取り違え防止を目的に、包装品へのバーコード表示やICタグの付加が進められている。新規設備だけではなく、現在使用している旧型の機械にもこれらに対応する改造が進められている。
(a)ブリスターパック(Blister Pack)
ブリスターとは気泡という意味があり、樹脂フィルムを容器状に成形し、内容物を充填したあと蓋側となるフィルムなどでシールした包装品を、その形態から一般的にブリスターパックと呼ぶ。このうち、錠剤やカプセルを1錠ずつ包装する形態は、PTP(Press Through Pack)と呼ばれている。ここでは、シリンジなどを包装する深絞り状の包装形態を区別して、ブリスターパックと表現することとする。
ブリスターパックの容器側フィルムには熱可塑性樹脂が使用され、加熱により軟化させたあと真空、あるいは圧空でポケット状に成型する。包装材料により肉厚分布を均一にする目的で、プラグアシストが組み合わされる場合がある。ここに、シリンジなどの内容物を充填し、蓋フィルムなどでシールする。内容物により包装材料には軟質、あるいは硬質のフィルムが適宜使用される。シールされた包装品は所定の寸法にトリミングされる。
深絞り状の深いポケットを成形するため、機械は間欠動作で稼働し、直線的に包装品を搬送する構造が一般的である。ポケットの形状にもよるが、間欠動作は毎分20回程度の能力で、幅広のフィルムを使用し多列で包装するシステムが多い。
(b)PTP(Press Through Pack)
錠剤やカプセルなどの内容物を1錠ずつ包装し、ポケットごと内容物を押して蓋フィルムなどを突き破って取り出す形態からPTPと呼ばれている。蓋フィルムを破壊して内容物を取り出すので、改竄防止機能は最高レベルにある。
原理はブリスターパックと基本的に同じである。ポケットの成形には真空、圧空、プラグアシストやプラグのみで成形する方式が用いられる。
近年、さらに高いレベルの「内容物の保護」を目的とした、両面アルミの形態も増加傾向にある。これは、ポケットを成形する容器側、蓋側共にアルミで構成される形態で、その成形はプラグのみで成形する方式が用いられる。
他にも包材に特殊な機能が追加された製品も開発が進められており、包装機械にはそれらに対応するために、機能アップ、機能追加が必要となる。実現の為には事前の検証が不可欠であり、包材メーカーと機械設備メーカー双方の取り組みが必要となる。
シートには分割用のスリットが施されるが、誤飲防止の自主申し合わせから、2錠単位以上の分割とされている。機械は連続動作と間欠動作を組み合わせた構造となっており。高速機では毎分800シートの製造が可能である。
医療用医薬品向けではPTPシートを向かい合わせにし(抱き合わせと呼ぶ)、10枚1組など、複数枚を積み重ねた状態で後工程へ搬送され、袋詰めあるいは小箱詰めされる。一方OTC医薬品向けは1枚~3枚を小箱詰めする形態が多い。両方が兼用できるシステムも構築されている。
PTPシートへのバーコード表示の普及が進み、蓋フィルムの印刷をPTPシートに合わせてシールする印刷ピッチ合わせ機能が定番化してきた。容器フィルムを延伸して合わせる方法と蓋フィルムを延伸して合わせる方法とがあるが、いずれも実用化されている。変動する因子をバーコードへ入れる場合は、管理運用の面からPTP機内で蓋フィルムへバーコードを印刷するインライン印刷機の搭載が必要となる。読み取り精度の評価なども進められている。
(c)瓶小分包装
ガラス瓶あるいはプラスチック瓶に薬剤(錠剤、カプセル剤)を詰めた包装形態をいう。
瓶小分包装は一般的には次のような工程により製造される。洗浄した空瓶に、薬剤を計数、充填し、必要により乾燥剤、緩衝材をいれてキャップ締めを行なう。次に瓶にラベル貼りなどにより表示を行ない、添付文書とともにケースに詰めて製品とする。
小分包装の基本機能として薬剤の計数があるが、大きく分けて、光電センサ方式(単列式、多列式)とスラット方式がある。
(1)光電センサ方式
① 単列式
フィーダーあるいはターンテーブルを用い薬剤を1列に整列し、1個ずつ落下させ、これを光電センサにて検知、計数する方式である。単列式の特徴は、薬剤を整列させるガイドの幅を調整するだけで形やサイズが変わっても計数可能なことである。また、交換部品が不要、短時間で切り替えが可能など、多品種少量生産に向いている方式である。
② 多列式
多列のフィーダーを用い、粗計数と精密計数を組み合わせた方式である。具体的には、直進フィーダーを用い多列のトラフ上に薬剤を整列させ、まず粗計数として薬剤を各列1個ずつ落下させる。これを光電センサにより列ごとに計数し、各列の計数合計が計数設定値に近づくと直進フィーダーが低速モードに切り替わる。この時中央の1列以外はゲートを閉じ、中央1列以外も計数を続行し、ゲート内に薬剤を保留して次の瓶への充填に備える。
この方式は、形(径、厚さ、形状)が大きく変わる切り替えでは、整列トラフの交換が必要となるが、通常は直進フィーダーの感度調整のみ行なえば良い。単列式と同様に多品種少量生産に適し、トラフの列数を多くすることで能力を高めることができる(最大約5000錠/分程度)。
(2)スラット方式
スラット方式とは「スラット板」と呼ばれる、薬剤のサイズに合わせた穴を1枚の板に規格数あけたものを、キャタピラー状に配列(エンドレスにつなげ、連続回転する)し、このスラット板に薬剤を落とし込み、スラット板単位で計数してボトルに充填する方式である。
この方式は光電センサ方式に比較し高能力であり、大量生産に向いている。
(a)ポケット成形(プラグアシスト成形の場合)
① フィルム加熱温度
② 成形型温度
③ プラグ温度
④ 成形ブロー圧
⑤ 成形ブロータイミング
⑥ プラグ動作タイミング
⑦ プラグ動作位置
(b)シール
① シール温度
② シール圧力
更新日:2020年10月16日