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第1章 1.10 カプセル充填

1.10.1 目的

 カプセル製剤の目的は下記の通りである。
(1) 容易迅速な固形製剤化
(2) 苦味や不快臭のマスキング
(3) 遮光性(光安定性の向上)
(4) 酸化安定性の向上
(5) 製品の差別化(色・印刷による識別性向上)
(6) 液状薬剤の製剤化
(7) マルチプルユニット製剤の製剤化(錠剤・液体・粉末・顆粒・カプセル)
(8) インハレーション製剤の製剤化
(9) 腸溶性製剤の製剤化
(10) ダブルブラインド用製剤の製造
(11) ケミカルハザード対応が容易
(12) 服薬管理(小型発信機の充填が容易)

今後のカプセル製剤
 近年、がん疾患に関する新薬開発品目が増加傾向にあり、その中でケミカルハザード対応としてカプセルが使用される割合が増加している。液体充填に使用されているバンドシールを施すことで完全に密閉化でき、ケミカルハザード対応の製品化が容易になる。
 また、カプセルへのマイクロドーズ充填技術が確立され、粉末の充填が0.5 ㎎から可能になり臨床試験・吸引製剤への活用が増加傾向である。

1.10.2 装置の分類と原理

 カプセル充填機の基本的機構は、下記の機構から成り立っている。
(1) 空カプセルの供給機構
(2) 空カプセルの方向規正機構
(3) キャップとボディの分離機構
(4) 分離不良カプセルの除去機構
(5) 充填薬剤の供給機構
(6) 充填薬剤の充填機構
(7) キャップとボディの結合機構
(8) 充填カプセルの放出機構
(9) カプセル保持部のクリーニング機構

カプセル充填機の自動化・作業改善として下記の機能を追加できる。
(1) 質量コントロール:充填直後のカプセルをサンプリングして質量測定し、その結果を基にカプセル充填の充填量を調整する。
(2) Net Weight測定:充填薬剤を直接測定する方法と空カプセルと充填カプセルを測定してその差を算出する方法がある。
(3) ケミカルハザード対応:充填作業者の保護および交差汚染を防止するためのコンテイメント対応したカプセル充填機が開発されている。

充填薬剤によって充填機構が異なり、下記のように分類される。
(1) オーガー式粉末充填
 ホッパーから落下供給された粉末を攪拌羽根とオーガー(螺旋状の羽根)の回転圧力によって直接カプセルボディへ粉末を充填する機構。
 【固着性粉末、非流動性粉末に対応】
(2) バイブレーション式粉末充填
 粉末供給フィーダー内の粉末にバイブレータで加振して、粉末の流動性を改善することにより直接カプセルボディへ充填する機構。
 【固着性粉末、流動性粉末に対応】
(3) ダイコンプレス式粉末充填
 粉末を成型プレート内に導入してタッピングロッドで圧縮成型・余剰粉末を掻き取った後、カプセルボディにその成型した粉末を移す機構。
 【粉末充填の主流】
(4) ファンネル式粉末充填
 粉末層に充填用ファンネルを押し込んで粉末を固め、カプセルボディにファンネル内部の粉末を移す機構。
 【固着性粉末、非流動性粉末に対応】
(5) ドラムフィラー式粉末充填
 微量の粉末充填を目的とし、ドラム表面の穴に粉末を固めず容積計量してカプセルボディに粉末を移す機構。
 【マイクロドーズ製剤、充填量0.5 ㎎から充填が可能】
(6) 顆粒充填
 顆粒製剤を調整可能な枡(容積式)で計量して、ボディに顆粒を移す機構
 【3種類までの顆粒製剤の充填が可能】
(7) 錠剤・カプセル充填
 錠剤、マイクロ錠剤、カプセルなどを計数してボディに充填する機構
 【ボディに入る大きさ・量であれば可能、複合充填も可】
(8) 液充填
 液体や高温溶融媒体を常温から80℃の溶融温度を維持する加熱できるタンクおよびポンピングユニットを装備し、液体を複数のシリンジ
 で分注しカプセルボディに充填する機構。
 【液体、熱溶融性媒体:通常10~10,000 mPa・s】
液体充填の場合は液漏れ対応として、別途カプセルの嵌合部をシールして密閉させるバンドシール機が必要である。カプセル充填機は、カプセルの搬送部と充填ユニットを分離することが出来るので、充填ユニットの事前の準備と簡単な切替え作業によりセットアップ時間と洗浄時間の短縮ができる。充填ユニットの追加が簡単で、カプセル製剤の拡張が可能になる。

1.10.3 パラメータ

(1) カプセル
カプセルの規格は、ほとんど世界共通の規格で、#000~#5の8種類およびダブルブラインド用としてAA~Eの6種類がある。  
日本では、♯00~♯5が使用されているが、主流はサイズ♯2~♯4である。
カプセルの材質には、動物性と植物性の2種類があるが、近年低水分の薬剤が増加傾向にあり、低水分下で安定している植物性カプセルが増加している。

(2) 処理能力
 世界のカプセル充填機は、卓上式の試作研究用から大型まで広範囲の処理能力の機械が 存在する。
 ① 研究開発用:1,000~5,000(カプセル/時間)
 ② 低処理能力生産用:10,000~50,000(カプセル/時間)
 ③ 中処理能力生産用:70,000~150,000(カプセル/時間)
 ④ 高処理能力生産用:200,000~400,000(カプセル/時間)
(3) 充填薬剤の性状
 充填薬剤の性状を確認したうえで充填方式の選択が必要となる。
 ① 粉末: 流動性、固着性、ゆるみ嵩密度、かため嵩密度、噴流性
 ② 顆粒: 顆粒径、帯電性
 ③ 液体: 粘度、溶融温度、チキソ性
 ④ 錠剤: 大きさ、厚み、強度、帯電性
 ⑤ マイクロ錠剤: 大きさ、厚み、強度、帯電性
 ⑥ カプセル: カプセルサイズ

〔クオリカプス株式会社 柳生 元啓〕

更新日:2020年10月16日